講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

270冊目

モーニングKC『宮本から君へ』(1)~(12)

新井英樹 

足立敬
第一事業戦略部 23歳 男

働く覚悟

書籍表紙

モーニングKC
『宮本から君へ』(1)~(12)
著者:新井英樹
発行年月日:1991/07/19〜1994/11/18

大学を卒業した私に「新入社員にオススメのマンガがある」と友人から紹介されたのが「宮本から君へ」です。主人公の宮本は大学を卒業後、文具メーカーの営業マンとして社会人になります。仕事や恋愛を中心にストーリーが展開されていくのですが、主人公の突拍子のなさやエネルギッシュなストーリー展開に魅了されページを捲る手が止まらなくなります。

社会人経験のない私にとって、サラリーマンものは馴染みのないものでしたが、そんなことは無関係でした。社会人経験の有無に関わらず、仕事人間宮本の破天荒さは見るものの心を掴みます。この作品から伝わってくる異様なパワーは圧倒的です。働くとは? 生きるとは? 人を愛するとは? この作品に込められたメッセージはあまりにもエグい。人が触れてほしくない部分を平気で突いてきます。ですが、それがこの作品の魅力なのです。誰も描くことができなかった人間の心を汚く、そして美しく表現しています。

宮本という無茶苦茶な人間を見ていると、自分自身について考えさせられます。仕事を取るために殴られ、血を流しながらも頭を下げ続ける宮本の矜持。愛する女を守るために全てを投げ出す気概。苦しいほど読者の心を揺さぶってくる宮本の行動に、自分ならどうするのかと自問自答させられます。自分にとって働くこと、生きること、愛することの意味は何なのか。深く考える時間ができました。

自分が新入社員であるということもあり、いやおうなく物語に引き込まれていきました。会社に入ればきっと困難なことも待ち受けているだろう。それは覚悟していました。いや、覚悟したフリをしていました。「宮本から君へ」を読んだことで、私に本物の覚悟が生まれました。この作品で宮本が立ち向かう壁は圧倒的なものがあります。宮本は宮本の方法で、ありえないような手段でこれを乗り越えていく。「今、ここ」を生きていく宮本の姿に、「働くこと」への覚悟を決めた一冊になりました。私も全力で走り抜けたい。そう思わずにはいられない私の「この1冊!」です。

新入社員の人にはもちろん、もうすでに社会人を何年も経験している人にも新たな発見のある1冊だと思います。働くことの意味、人を愛するということ、この本に潜む深いテーマをあなたの心にぶつけてみませんか? きっと新しい覚悟が芽生えてくるはずです。

(2016.06.01)

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