講談社100周年記念企画 この1冊!:講談社コミックスフレンド『セシール気分』(1)〜(3)

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

196冊目

講談社コミックスフレンド『セシール気分』(1)〜(3)

吉田まゆみ

鎌形圭代
ARIA編集部 40代 女

パリジェンヌのキラキラとドキドキがいっぱい!

書籍表紙

講談社コミックスフレンド『セシール気分』(1)〜(3)
著者:吉田まゆみ
発行年月日:1979/11/13〜1980/06/11

 だいぶ昔のことになりますが、中学2年の時、生まれて初めての入院生活を味わいました。夏も終わり秋の涼しさが感じられる季節、いつ退院できるのかも分からず不安な娘のために母親が買ってきてくれたのは、漫画誌の「少女フレンド」でした。まだまだ「なかよし」「りぼん」っ子だった私には、ずいぶんと大人でおしゃれな雑誌で、その「フレンド」にちょうど掲載されていたのが、吉田まゆみさんの『エリーDoing!』だったでしょうか。そこから、この『セシール気分』にたどりつきます。

『セシール気分』は、フランスのカーニュで暮らす女子高校生セシールの青春を描いた物語ですが、埼玉の田舎の中学生だった自分には、未知のキラキラしたものがいっぱいいっぱい詰まった作品だったのです。どんよりした入院生活から、心だけはフランスへ……!

 主人公のセシールは、ヴァイオレット色のソレックス(スクーター)に乗って学校に行く活発な女の子。洋服はシンプルだけど、今見てもおしゃれなパリジェンヌ風。白シャツにネクタイをルーズに結び、細身のデニムというコーデの時もあれば、フリルのブラウスに少し太めのデニムを合わせたり。髪型もアップにしたり三つ編みやツインテールにしたり、洋服に合わせて変えていて、入院生活のパジャマだけの私には、可愛くて見ているだけで幸せでした。

 飼い犬の名前はロジャー(QUEENのロジャー・テイラーから取った)で、金髪のママは芝居見物の次の日は二日酔い、ママと離婚したテレビプロデューサーのパパはパリに住んでいて……。昭和真っ只中の我が家とは大違いです!

 そして何よりも憧れだったのが、セシールとその仲間たちが集まる「カフェ・ド・ソレイユ」。そこでセシールは、2歳年上の男の子たちと出会います。ちょっぴりアラン・ドロン似の金髪のモーリス、リノ・バンチュラ似の黒髪のルネなど、船を設計し航海に出る夢を持つ彼らは、いつも集まって映画や芸術の話をしたり悪ふさげしたり。そして彼らが飲んでいるのは赤いカンパリソーダ……。赤い炭酸の飲み物ってなんだ? 見たことも聞いたこともない、その飲み物を初めて飲めたのは高校生になってからでした。ピザ屋さんで飲んだ時は苦くてまずかったなぁ。

 リセもバカロレアも、ゴロワーズもディオールも、オールヴォワールもジュテームも、みんなこの漫画で覚えました。

 まさか同じ少女漫画の仕事につくようになり、あの頃自分が感じたようなドキドキやときめき、別世界に飛んでいくような、何度も読み返したくなるような物語を、今の読者の皆さんにお届けできているのかなと、30年近く経った今でも、たまに本棚からひっぱり出しては読んでいます。

(2013.05.01)

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