講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

262冊目

イブニングKC『モテキ』(1)~(4.5)

著者:久保ミツロウ

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長沢智大
モーニング編集部 23歳 男

創作の母はいつも“非モテ”だった

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書籍表紙

イブニングKC
『モテキ』(1)~(4.5)
著者:久保ミツロウ
発行年月日:2009/03/23~2010/09/07

 ふと、思うことがあります。モテない人間ほど、作家を志したくなるのではないか、と。多くの作家たちは、モテなさからくる孤独、葛藤、そして、モテたいという熱いエネルギーを紙とペンにぶつけた結果、創作という形で大成し、読者を楽しませてくれるのではないでしょうか。

 そんな、創作の源泉たる“非モテ”から着想されて生まれたマンガが『モテキ』です。私がこの作品と出会ったのは、孤独な浪人生活を経て、いい感じに美化しすぎたキャンパスライフと、平凡な日常とのギャップに苛まれていたころ。そこに描かれていたのは、ほぼ童貞の主人公、幸世が4人の女性との恋愛を経て、少しずつ成長していくラブコメディでした。ただ、ラブコメディにしてはリアルで痛々しいうえに、ほのかに切ない内容に、我が身が擦り切れる思いで読破したものです。

 幸世はモテるキャラクターではありませんが、まったくモテないわけではなく、なんとも絶妙なラインに立っている男です。そんな幸世に、服装や行動、何から何までそっくりだなと、よく友人から言われました。でも、私自身もその友人と幸世を重ねていたりしたので、日本中の男子が幸世像の押し付け合いをしていたのかも知れません。数年経って、今あらためて読んでみると、幸世も結構愛らしいキャラクターだなと偉そうにも思ってしまうのは、私もオトナになったからなのでしょうか。

 この本からあえて教えを頂戴するとすれば、自分から動かなきゃ、何も始まらないよ、といった感じでしょうか。傷つくこともたくさんあるし、何も手に入らないかもしれないけど、それでも自分を変えていこうと思える一冊です。ただ、「登校途中に出会った美少女に告白されて恋がはじまる」という類の妄想を繰り返してきた私にとって、その教えはかなり刺激的な処方箋でしたが……。いずれにせよ、『モテキ』はうぶな私を導き、たまに迷わせ、そしてキャンパスライフをちょっぴり充実したものにしてくれたわけです。

 この日本中の非モテ男子の共感をさらった男の物語をまだ読んだことのないみなさんは、今すぐ全4.5巻(番外編含む)を購入し、来たるべきモテ期に備えてみませんか?

(2015.08.01)

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