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別冊フレンドKC『少年少女ロマンス』(1)~(3)
別冊フレンドKC
『少年少女ロマンス』(1)~(3)
著者:ジョージ朝倉
発行年月日:2002/10/11~2004/01/13
今は亡き、ジュンク堂新宿店の店頭でこの本に出会ったのは、高校一年生のときでした。
たまたま店内の配置換えがあり、透明なカバーがかかっていない漫画がならぶ女性作家別の棚。何の気なしに手にとったのが、ジョージ朝倉さんの『少年少女ロマンス』だったのです。
数ページ読んですぐ、自分がとんでもないものを見つけてしまったことに気がつきました。
店を出て、駅に向かって歩き、改札に入りホームに立ち。それでも心の震えが止められず、新宿駅からジュンク堂へと引き返した私は、ジョージ朝倉さんの漫画ばかりを約一万円分買いました。人生で初めての大人買いです。
ずっしりと重い紙袋に、心がわくわくそわそわして、顔がにやけるのを抑えることができなかったのを覚えています。
きっとこの右手の重みが、新しい世界への扉を開いてくれる。そんな予感でいっぱいでした。
『少年少女ロマンス』は、物語の中のお姫さまに憧れて、理想の王子を探し続けるトンデモガール「蘭」と、見た目は王子、中身は悪魔(?)の悩める美男子「右京」がおりなす、ロマンチックラブコメディーです。
理想の王子さまの幻想を右京に重ね合わせて暴走する蘭と、蘭の期待する完璧な王子を目指して苦しむ右京。互いに想い合いながらも、二人の気持ちはいつまでたっても噛み合わず、傷つけあってばかり。
全三巻を通して、「永遠に成立することのない 君とオレとのロマンチシズム」が描かれます。
「正直引く」「やっぱ変だろ」 高校生にもなって、必死にお姫さまを目指して努力する蘭を友人たちは笑います。
たしかに、「信じること」はバカみたいなことかもしれません。
それでも、自分の夢を疑うことなく一直線に突き進む蘭を私は決して笑うことはできませんでした。
彼のことが好きで好きでたまらなくて、どうしていいのか分からず悩み。結果、殴り合いの「決闘」を申し込む。
ときに、エキセントリックなくらい真っすぐで純粋なジョージ朝倉作品の女の子たち。内なる激しさを秘めた彼女たちは、いつだって私の人生のロールモデルでした。
蘭にとってのサファイア姫やナウシカが、私にとっての蘭や、根岸、瑠璃、瀬々だったのです。
十代の多感な時期に、彼女たちのような「最強のお姫さま」に出会うことができたからこそ、今の私はあるのだと思います。
「愛を得た今!! なんて世界は美しいの!!! こんなの2人で生きないでどうすんの!? そりゃあ いつかは死ぬけれど! それは もっと先で! そのときが来たらアナタは! わたしを看取りながら!! また「愛してる」って言うんでしょ──!!?」
一巻のラスト、富士の樹海で生命の危機を迎えた右京を抱えながら走る蘭のセリフです。
何度も何度も音読し、諳んじることができるようになった今でも、このことばの持つ美しさには鳥肌をおさえることができません。
どれだけ笑われたっていい。いつだって、傷ついた王子を背負って爆走する「タフなお姫さま」で私はありたい。
熱くとがった思春期の心をもう一度、取りもどすことができる一冊です。
(2014.07.15)