講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

238冊目

イブニングKC『週刊石川雅之』

石川雅之

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並河洸
平成26年度新入社員 24歳 男

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書籍表紙

イブニングKC
『週刊石川雅之』
著者:石川雅之 
発行年月日:2003/02/21

 マンガを読む習慣っていつ身につけるものなんでしょうか?学級文庫に入ってる手塚作品? スマートフォンでWebマンガ?

 僕の場合は父の買ってくる「モーニング」、そして『週刊石川雅之』でした。

 『週刊石川雅之』は、『もやしもん』『純血のマリア』でお馴染みの石川雅之さんによる短篇集です。コント的なギャグ話から、不倫OLの日常の機微を捉えるしっとりめな話、ブサカワな鶏キャラの壮大な(?)冒険モノまで色々入って11編。どれも物語を摂取した満足感をキッチリと味わうことができる充実の一冊です。

 僕とこの短篇群との出会いが、掲載誌である「モーニング」でした。

 僕が「モーニング」を読み始めたのは小学四年生の時だったと思います。当時、並河家の資源ごみ置き場には、父親が読み終えた新聞やら雑誌やらが積み上げられ、その中に「モーニング」がありました。
 『デビルマンレディー』のエロさに惹かれて漁り始めた大人の雑誌。「読むと元気になる」を文字通りに実行している息子の姿に「お前もついにモーニングを読む歳に……」と、なぜか嬉しそうな両親の眼差しが向けられます。
 褒められて伸びるタイプを自負する僕は、予想外な奨励を受けて俄然マンガを読み込む心持ちになるわけです。
 これが僕のマンガ好きになるキッカケだったのではないかと思います。

 一方、「モーニング」を並河家に”配信”してくれる父親も、毎回必ず家に持ち帰ってくるわけではありませんでした。電車の網棚にうっかり忘れたり、出張でまるごと一週間帰宅しなかったりします。
 この環境下で、「一話完結型」ないし「読み切り」である、ということが僕にとっての良いマンガの条件となりました。これに該当したのがまさに『週刊石川雅之』だったわけです。

 「彼女の告白」が掲載された時、「こういうのを待ってたんだ!」と思ったことを覚えています。「もしも田舎に里帰りした息子が女になってたら……」というシチュエーションの設定と、迎撃するような両親からの衝撃の告白、そして最後のオチで全てを持っていく展開の上手さ。その号の「モーニング」は、資源ごみに出されてしまうまで何度も読み、その後の短期集中連載中も目を皿にして誌面を追いました。

 また、その後『もやしもん』が人気になっていた時、僕は高校生でした。「あの」石川雅之さんの新刊ということで、僕も当然飛びつきました。
 このとき、「好きな作家を信頼して次の作品を買う」という、「なんか通っぽい」マンガの購入パターンを踏むことができたことが、当時は結構な感動だったことを覚えています。『週刊石川雅之』から『もやしもん』へ、という流れを自然に辿れたことに、当時の僕のマンガ自尊心は、十二分に満足したわけです。その後も調子に乗って色々マンガを読み続けていたら、いつの間にか講談社に入社していたので、人生ってわかんないですね。

 ということで、『週刊石川雅之』は僕のマンガに対する姿勢を形成したマンガです。

 子供をマンガ好きに育てたい親御さん、こちらの単行本を『もやしもん』のオリゼーぬいぐるみなんかと一緒に、そっとリビングにでも放置してみてはいかがでしょうか。オススメの一冊です。

(2014.07.01)

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