講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

230冊目

モーニング・ツー No.1

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五十嵐祥
コミック販売部 27歳 男

夏休みに出会ったこの雑誌。

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講談社は、過去発行したほぼ全ての雑誌を合本(数冊分をまとめて1冊に製本したもの)として保存しています。写真は合本の中の『モーニング・ツー』創刊号の表紙です。
書籍表紙

モーニング・ツー No.1
発行年月日:2006/08/10

 2006年の8月。大学1年生だった私は1人朝方のコンビニで立ち読みをしていました。友達は皆自動車の免許合宿に出かけていて遊ぶ相手もおらず、(私はお金がなく、免許合宿に行くことが出来なかったのです。)暇つぶしと冷房を求めてフラフラと立ち寄ったコンビニで私はそれと出会ったのです。

 赤やピンク、紫など鮮やかで強い色を纏った雑誌たちが強烈な主張をする中、オノ・ナツメ氏の「長靴」を表紙として置いてあるモーニング・ツー創刊号だけは、淡く少し灰色がかった緑や茶色を主に構成されており、非常に優しく不思議な雰囲気を醸し出していました。

 アイスの入ったビニール袋を下げた手で、なんとなく雑誌を取り、開いて、読む。 ほんの暇つぶしのつもりでした、家に帰る前にちょっとマンガでも立ち読みを…そんな軽い気持ちは「長靴」によって一蹴されてしまいました。

 衝撃でした。

 なんだこれは?これはマンガなのか?こんなマンガ初めて読んだ…

「長靴」は離婚して離れて暮らしている父と息子が、父の営んでいるワイン用のぶどう畑の作業を通して再び心を通わせるというドラマです。私が心惹かれたのは物語以上にこのマンガの画面の綺麗さ、テンポの心地よさでした。それまで私にとってのマンガとは熱いバトルを繰り広げる少年コミックか、ヒロインが恋に恋して画面が花でいっぱいになる少女コミックしかありませんでした。しかし、このマンガはそのどれとも違う、シンプルでいて一コマ一コマの画面が鮮明で力強く、マンガとはここまで懐の深いものなのかと感銘を受けました。

 すぐさま私はレジへ向かい、モーニング・ツーを購入し家に帰り、買ったアイスが溶けるのも構わず何度も何度も読み返しました。

 大学一年の夏休み、本来ならきっと女の子と遊んだり、旅行に行ったりという思い出を持つのが健全な男子の正しい形なのでしょう。ただ、自分にとって大学一年の夏休みの思い出はあの暑い夏の朝、あの雑誌と、この作品と出会ったことでした。

 元からマンガは大好きでしたが、明確に将来マンガに関わっていきたいと自覚させてくれ、現在講談社へ入社するきっかけを作ってくれた、今の自分へと繋がるとても大切な一冊です。

 このような一冊に出会えることが出来た自分は本当に幸せだなと感じると共に、この仕事を通じて、読者の皆様にとっての“1冊”を届けられるよう頑張りたいなと思っております。

(2014.06.01)

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