講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

229冊目

『原発ホワイトアウト』

若杉冽 

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山下直人
書籍第一販売部 24歳 男

国民に知らされない 国家権力の脅威!

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書籍表紙

『原発ホワイトアウト』
著者:若杉冽  
発行年月日:2013/9/11

 刊行前のこと、「『三本の矢』を超える作品ができました!」と担当編集者から原稿をもらった瞬間は、今でも鮮明に覚えている。原稿に目を通しつつ、『三本の矢』を知らない私は即購入して、すぐ読んだ。(*『三本の矢』(早川書房 1998年4月刊)は現在、絶版となっている。昭和金融恐慌をモデルとした経済小説で、当時、現役のキャリア官僚が書いた経済小説として話題を呼んだ。上下巻合わせて累計20万部近くまで売れた。)両作品、新人作家とは思えない巧妙な構成となっており、文章も大変上手く、驚愕をした。

 東京大学法学部卒業。国家公務員I種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務。

 今回、私が取り上げた『原発ホワイトアウト』に記載されたプロフィールは、上記の情報のみだ。著者名は、若杉冽。本書は、限りなく事実に基づいて書かれた現役のキャリア官僚による告発ノンフィクションノベルである。刊行直後から「省庁内で犯人探し」が始まるなど話題を呼び、無名の著者としては異例の発売1ヶ月あまりで5万部を超え、瞬く間に10万部、そして現在は11刷19万部を突破し、ロングセラーのヒット書目となった。テレビ、新聞、雑誌とマスコミ各社から取材が相次ぎ、書店からの注文も殺到。政治家や様々な業界関係者が、ブログやSNSなどで取り上げたほか、読者からの反応も大変多く(*Amazonにおいては、2014/5/13時点で、181件のレビューが書かれている)老若男女すべての方に読まれ、「映像化してほしい!」など様々な声をいただいた。

 『原発ホワイトアウト』は、省庁や政治家、電力会社における既得権益の癒着構造を見事に描いており、原発の利権を巡る「モンスターシステム」の仕組みを暴いている。本書を読めば、原発問題をはじめ、現在、日本国家が抱えている数々の問題点が明らかになっていく。この作品の登場人物の名前が、実在する人物に近しい名前であることも、よりリアリティを感じさせる要因となっている。どの人物であるかは、ぜひ本書を読み、一考していただきたい。また本書が刊行されてから若杉氏は、原発問題以外にも、特定秘密保護法など、多岐にわたり言及されている。今後の活躍に目が離せない。

 原発問題は天災か、それとも人災だったのか。2011年の震災から早3年が経ち、「脱原発」から「原発再稼働」の動きが出てきている。本書は、著者が権力の中枢に属しながら、「権力」と真っ向から対峙し、戦った渾身の一作であり、日本国民であれば、誰しもが一読すべき本である。この本は、日本の未来に対して、警告しているのだ。「原発は、また必ず爆発する」と。

(2014.05.15)

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