講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

222冊目

モーニングKC『つらつらわらじ』(1)〜(5)

オノ・ナツメ

""

渡邉靖子
デジタルプロモーション部 43歳 女

粋な殿様の旅路に思うこと

""
書籍表紙

モーニングKC
『つらつらわらじ』
著者:オノ・ナツメ 
発行年月日:2010/09/22〜2013/02/22

 時代劇が好きだ。
 大作映画より、どちらかというとTV時代劇の方が好ましい。
 毎週放送しているものでも、2時間の特番的なものでも、大河でも、そこにちょんまげが出ている限り、チャンネルが変えられなくなってしまう。
「殿」とか「ご家中」とかいう言葉に弱いのだ。
 幼いころ、祖母と一緒に水戸黄門を見すぎたのが原因かもしれない。

 定番の時代劇には「お決まり」の展開がある。その中でのちょっとした演出の違いや、『へーこの人がこの役で』というような「配役の妙」、時には「どう考えてもおかしいところ(「白馬がありえないところを走ってくる」とか)」を探すのを、楽しみの1つにしている。

「つらつらわらじ」は、そんな私のお気に入りの作品だ。
 読んでいると、なんだか王道の時代劇を見ているような気持ちになる。
 時代もののコミックは、どちらかというとシリアスだったりコミカルだったりすることが多いのだけれど、いい意味で力が抜けていて、読み終わった後に「ふふふ」と思うところが、似ていると思う。

1器が大きくて、ときに家臣を困らせる、魅力的な殿様が出てくる
2「何かの時代劇にいたな」感のある家臣や登場人物たち
3旅ものである

 という設定も、一役買っているかもしれない。

 話は、岡山藩熊田家藩主治隆が参勤交代で江戸に上る道中を軸に展開する。
以心伝心の供回りと、なったばかりで気負いがある若家老、対立勢力である老中から放たれた隠密が、「これで最後」と心に決めている殿様の、いつもとちょっと違う旅に同行する。
 その過程で、自分のすべきことを見つけ、成長していく、というストーリーだ。

 江戸に着くまでには、旅ならではの予期せぬ出来事があったり、名物の甘味を食べたり、川を渡ったり、富士を見たりという、「旅もの」ならではの場面がたくさん出てきて、交わされる会話や、どーんと開けた空を見ていると、なんだかゆったりした気分になってくる。
 このあたりが、時代もののよいところで「ま、いっか。細かいことは」と思えてくる。

 終盤、隠居の理由を尋ねられた殿様の答えが、いいなと思う。
「ぎょうさんみたから」。
 潔くてかっこいい。殿様はこうあらねば。

 話は、江戸に着いた殿様の「最後にやってみたかったこと」が明かされて大団円を迎える。
 自分も社会人生活に幕を引くときは、「ぎょうさんみた」という心持ちでいられたらいいな、と思う。

「娯楽系時代もの」 がお好きな方におすすめです。

(2014.01.01)

講談社の本はこちら

講談社BOOK倶楽部 野間清治と創業物語