講談社100周年記念企画 この1冊!:『ティンガ・ティンガ アフリカン・ポップ・アートの世界』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

217冊目

『ティンガ・ティンガ アフリカン・ポップ・アートの世界』

編:白石顕二・山本富美子

木村貴之
週刊現代編集部 50歳 男

講談社の「懐の深さ」が分かる一冊

書籍表紙

『ティンガ・ティンガ アフリカン・ポップ・アートの世界』
編:白石顕二・山本富美子
発行年月日:1990/03/27

 8月末、富山県南砺市で行われたワールドミュージックのフェスティバルに出かけたときのこと。会場の一角に、アフリカの画家の作品を展示・販売しているテントがあった。覗いてみると、「ティンガティンガ派」と呼ばれる画家の絵が飾られている。見た瞬間、30年近く前の記憶がよみがえった。

 1985年、有楽町西武の美術館。アフリカのポップアートを紹介する、日本初の大規模な展覧会『ムパタ展』が開かれた。ムパタは、ティンガティンガ派の画家の一人。それまで見たことのなかった作風の絵画群に驚きを感じ、身体が震えた。

 絵の主な題材はアフリカの大地に棲む動物や植物、描かれているのは自然の息吹、あふれる生命力だ。木の板に塗られたエナメルペンキが、活き活きと鮮やかな色彩を放ち、陰影を排して平面的に描かれているため、ユーモラスで可愛らしい。技巧を感じさせない素朴なタッチが、心を和ませる。

 そもそもティンガティンガとは、タンザニアのエドワード・サイディ・ティンガティンガという人(1932〜1972年)が生み出した画法を指す。彼が生まれ育ったダルエスサラームという町の郊外には、今もティンガティンガ派の画家が集まって生活する村があるという。

 南砺市から東京へ帰る道すがら、そういえば自宅にティンガティンガの画集があることを思い出した。帰宅してさっそく本棚を眺めてみると、確かにありました、『ティンガティンガ アフリカン・ポップアートの世界』。これを手に取るのは、久しぶりのことだ。ムパタ展で感動した20代の頃のことをあらためて思い出し、この画集のことを忘れかけていた最近の自分を少し恥じた。

 画集の奥付を見たら、初版の発行は90年3月、版元は講談社。そうか、こんな画集も講談社は出していたのだと、ちょっと感心してしまった。当時人気のあったイラストレーター・河村要助さんらの対談も収められていて楽しい。

(2013.11.15)

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