215冊目
『ボーイング747─400の飛ばし方 London to New York』
『ボーイング747─400の飛ばし方 London to New York』
著者:スタンリー・スチュワート
翻訳者:小西進
発行年月日:2001/02/26
タイトルを目にした瞬間に思わず手を出した本です。
白状すると本屋さんで手にして初めて「講談社の本」だったと気づく事が少なくありません、あまり大きな声では言えませんが知らない本も沢山あります。残念ながらこの本もその一冊ですが、そんなときは「こんな本も出していたのか」と講談社の守備範囲の広さを実感する瞬間でもあります。
しかし重要なのは中身です! なぜ金属の塊が飛ぶのかも知らない私に理解できるものなのか、自社の本を棚に戻すことは許されません。講談社には厳しい掟があるのです。ちなみに私、航空機マニアでも何でもありません、本当に通りすがりの者です。
さて、ようやく本題です。著者は英国航空で747の機長を務めたパイロット、訳者も全日空の元機長。まえがきで「本書は物語ではない、諸君が本当に知りたいと思う事を単純明快に提供する」と著者、専門用語満載のマニア向け手引き書かと警戒しながら読み始めます。
まずは準備から着陸までの飛行手順が紹介されますが、いきなり引き込まれます。実際のロンドン・ニューヨーク間の定期航路上での飛行を例にしながら、計器や航法そして管制官との交信内容・意味などのあらゆる事が解説されているからです。客室とのドア1枚を隔てた向こう側での奮闘を知ることができます。後半からは少々堅くなっての理論編に進みますが、すでに心は雲の上です。「(丸い)地球の上空を飛行する」という観点も交えて、飛行原理から性能そしてルールや裏話などが紹介されており飽きさせません。
かなりマニアックな部分もあり、専門用語や略語も多いのですが(訳者の心配りも感じられる)分かりやすい文章で退屈せずに読み進めます。そもそも通常の学校で教わる分野のものではありませんから、かえって拒絶反応なしで入り込めます。写真や図版も使用して基礎から説明してくれます、能天気な私などは自分にも出来る気になってしまうぐらいです。当然ながら「395トンの物体がなぜ空を飛ぶのか」も解説されています(さすが! ツボは外しません)、とにかく飛行機の魅力を満載したジャンボな一冊です。あらゆる緊急事態を想定した(当時の)最新鋭機の技術を解説した第三章も必読です。
本格的に原理やシステムをしっかりと紹介した科学書としての面では理解できない箇所も出てきますが、全体的にとらえれば(著者の意に反して?)十分楽しめる読み物として仕上がっていると思います。実際の搭乗機上で読めば臨場感も倍増!さらに楽しめること間違いありません。旅のお供にも最適な一冊です、絶対お勧めです。 気が付けば…ほら、もう到着です。
ご搭乗誠にありがとうございました。
(2013.11.01)