209冊目
『Yoshitomo Nara Photo Book 2003-2012 奈良美智写真帖』
『Yoshitomo Nara Photo Book 2003-2012 奈良美智写真帖』
著者:奈良美智
発行年月日:2013/05/30
昨年末(2012年)、その一年で見た美術展のベストを勝手に選んでみました。優劣つけがたい展覧会が多い一年だったのですが、ベスト3は、すんなり決めることができました。自分なりに事件だった「ジャクソン・ポロック展」(国立近代美術館)第3位と、「蕭白ショック!!」(千葉市美術館)第2位、を押さえ、堂々の1位は「奈良美智 君や僕にちょっと似ている」(横浜美術館)!!
10年ぶりに開かれた大々的な展覧会、「君や僕にちょっと似ている」展には、今までとはちょっと雰囲気の違う、一度見始めると視線をはずすことが困難になり、しばらくぼう然と見続けてしまう絵が、いくつも展示されていて驚きました! 「Young Mother」「春少女」「夜まで待てない」などなど、大きなキャンバスにアクリルで描かれた女性像がそれで、これまでの絵とは違い、奥行き、暖かみ、切れば血がでそうなその肌合いが見事に描き出されています。すごい! すばらしい!! 奈良美智はすでに次の次元に足を踏み出していた! と、勝手に感極まり、めんどくさがりの私が、会期中3回も横浜に足を運んでしまいました。
そんな奈良さんが、その日常をスナップした写真集の最新版が登場しました。奈良美智撮影による写真集としては、2003年に上梓された『the good, the bad, the average…and unique』以降、2冊目かな? 前作は奈良さんが出会った世界の子供たちや動物、風景の数々のスナップに終始していましたが、今回の「写真帖」は、作品の制作現場をとらえたものが数多く含まれています。彼の変貌の秘密がとらえられているのでは、と思わず1点1点凝視してしまいました。「秘密」とまではいきませんが、やはりありました。奈良展で驚いたと書いたいくつかの絵は、展覧会でも紹介されていましたが、完成までかなり激しく描き直されています。その制作途中の絵が、いくつか撮影されており、これはかなり貴重! もちろん、動物や子供たちの写真も数多く収められています。わたし的なベストショットは、カンガルーの寝顔のアップが左ページに、青い服を着た女の子が横になっている写真が右ページに納められた見開きです(2つの写真がそれぞれ共鳴しあい、なんともいえない、いい感じなんです)。 なにげないショットにも、彼独特の視線が感じられ、ページをめくるごとに、思わずにんまり。
奈良美智好きのオヤジ、というだけでなんか白い目で見られそうなとこですが、いいものはいい! ということで、彼の作品を眺めながら、今日もにやにやし続ける、あやしいわたしでありました…(汗)
(2013.08.15)