講談社100周年記念企画 この1冊!:少年マガジンKC『カメレオン』(1)〜(47)

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

208冊目

少年マガジンKC『カメレオン』(1)〜(47)

加瀬あつし

星野太一
主計部 30代 男

理想の高校生活がそこにはあった

書籍表紙

少年マガジンKC
『カメレオン』(1)〜(47)
著者:加瀬あつし
発行年月日:1990/08/17〜2000/03/16

 本作の主人公・ヤザワは、中学校時代にいじめられた経験を持ち、華々しい高校生活を送るべく、高校デビューを果たす。
 身長が低く、容姿も人並み以下で、喧嘩も弱い彼は、しかしながらその人並みはずれた向上心(と、あえて言う)と、口の上手さ、類まれなる強運と、さらには土壇場で発揮される勇気を武器に、日本一のヤンキーへと成り上がっていく。

 ここまで書いて読み返すと、有り体な不良モノの漫画のような印象を受けてしまいますね。それは僕の文章力の無さによるもので、大きな誤解です。
 この中には、友との友情があり、他校との抗争があり、成功と失敗があり、ちょっとエッチなハプニングありと、まさにカメレオンを読み始めた当時中学生だった僕が理想とする高校生活が凝縮されておりました。
 それらのエピソードが、時にシリアスに、時にコミカルに、テンポよく絡み合いながら紡がれていく様子は爽快そのもの。当時の週刊少年マガジンにおける一服の清涼剤(あくまで主観)として、不動の地位を築いていたのでした。

 特に、一話に最低一つ(未検証)含まれている下ネタは非常に秀逸で、当時思春期真っ只中だった僕には平静を装って読み進めるのが困難だったため、カメレオンのみ登下校の電車内で読まずに家に帰ってからこっそり読むという自主ルールを運用することとなった次第です。

 余談ですが、大学時代に後姿が椎名そっくりだった友人がいました。本人にその旨伝えたところ、頭に青筋を立て、首を左右に振りながらお怒りになっていたのを今でも昨日のことのように覚えています。本当にそっくりでした。

 結局、ヤザワのように最後の最後で勇気を振り絞ることができなかった僕は、日本一のヤンキーに成り上がることもなく、また日本一のいじめられっこに成り上がることもなく、平々凡々な高校生活を堪能することになったのですが、そんな僕の心の奥底で、ヤザワと駆け抜けた高校3年間(連載期間は約10年!)は今でも宝物のように光を放ち続けています。

 これから高校デビューを企む貴方。
 これから大学デビューを企む貴方。
 これから社会人デビューを企む貴方。
 社会人になったのなんかとうの昔だけれども、それでもこれから何かしらのデビューを企む貴方。
 そして、特に何のデビューも企んでいない貴方。

 一度ヤザワのデビューっぷりをご覧ください。
 きっと心動かされるものがあるはずです。

(2013.08.01)

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