講談社100周年記念企画 この1冊!:『さようなら、ギャングたち』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

207冊目

『さようなら、ギャングたち』

高橋源一郎

嘉悦正明
第五編集局 50代 男

文学でロックしてもいいんだと教えてくれた本

書籍表紙

『さようなら、ギャングたち』
著者:高橋源一郎
発行年月日:1982/10/27

 大学時代はバンド漬けの毎日だった。ビートルズ、フー、クイーン、デヴィッド・ボウイ、ツェッペリン、フロイド……。その頃、バンド仲間が読むモノといえば一部の少女マンガだった。ブリティッシュ・ロック好きは、なぜか少女マンガ愛好家が多かった。いっぽう小説は話題になることが少なかった。僕自身は宮沢賢治と稲垣足穂にハマったが、現代の作家のものはあまり読まなかった。

 1982年、高橋源一郎氏の『さようなら、ギャングたち』が刊行された。表4に、オーバーオールを穿いた著者の写真が掲載されている。なんか小説家じゃないみたいだと思った。ミュージシャンぽかった。それで読んでみようと思ったのだろう。第一部のタイトルは「中島みゆき・ソングブックを求めて」。なんだそれ。読んでも意味がよく分からない。でも、かっこいい。架空のバンドの歌詞を日本語訳したみたいだ。小説ってこんなんでいいんだっけ。

 あとで分かったことだけど、高橋源一郎氏は少女マンガもすごく読んでいる。ある種のロック、ある種の少女マンガは僕が学生時代に表現として最も身近に感じたものだが、高橋氏の文学にも同じ匂いがした。うまく言えないけれど。

 そういえば、入社してまもないころ、社内報で最近読んだ本について書いたことがあるが、その時取り上げたのも高橋氏の第2作『虹の彼方に〜オーヴァー・ザ・レインボー』だった。よっぽど好きだったんだなあ。 現在『さようなら、ギャングたち』は、講談社文芸文庫に収録されています。読んだことのない若い人、ぜひぜひ手に取ってみてください。ビートルズやフーがいま聴いてもかっこいいように、時代を越えた面白さです。

(2013.08.01)

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