講談社100周年記念企画 この1冊!:講談社BIZ『裸でも生きる』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

197冊目

講談社BIZ『裸でも生きる』

山口絵理子

吉田真理子
平成25年度新入社員 22歳 女

私にできることを探して

書籍表紙

講談社BIZ
『裸でも生きる』
著者:山口絵理子
発行年月日:2007/09/19

「私とはなにか。それを考えることをやめないでください」。四年間、大学でお世話になった恩師に常々言われていた言葉が、最近よく頭に浮かびます。社会人一年目の春。学生の頃は、漠然と遠いことのように思えていた社会人生活ですが、気が付けば期待と不安を抱えながら研修を受ける毎日です。日々様々な方と出会う中で、「自分にはなにがあるんだろう。一体なにができるんだろう」。と考えています。

『裸でも生きる』の著者、山口絵理子さんは、若くして自分の使命をみつけ、実現する天才です。

 この本とは、昨年就職活動をしている最中に出会いました。「25歳女性起業家」。表紙の文句からうかがえる並々ならぬバイタリティに圧倒されながら、著者のプロフィールに目を通します。「なんだ。有名大学を出たキャリアウーマンか」。ひねくれ者なので、ため息とともに一度書棚へ戻しました。持ち前の頭脳で、自信満々に成功体験を語っている類の本だと誤解したのです。また、「途上国バングラディッシュ」の文字から、就活生の多くが武器にする社会貢献、留学経験、ボランティアなどが想起され、そのどれにも尽力していなかった私にとっては、山口さんはドンピシャに「遠い女性」。でも、年の近い女性が「裸でも生きる」と言い切る由縁がどうしても気になって、読みました。そして今、「この一冊!」に選んでいるのだから、何事も食わず嫌いは良くないなと思います。

 工業高校時代、男子しかいない柔道部で過酷な鍛え上げを行い、全日本ジュニアオリンピックで7位。大学受験者3%ほどの高校から、自力で追い込み慶應義塾大学に合格。山口さんの負けず嫌い精神は学生時代からいかんなく発揮されます。ただそれは、「勝ちたい」「社会を変えたい」という漠然とした思いからにすぎませんでした。 アメリカの国際機関から単身で飛び込んだアジア最貧国バングラディッシュで、彼女は打ちのめされます。「私は何かの力になりたいと思ってこの国に来たが、私に持っていない『強さ』をこの国の人たちはみんな持っていた」。自らの恵まれた環境に気付かされ、そこでできること、やりたいことを真剣に考え始めます。他人の評価や比較に囚われない、自分の信じた道を歩こうと決意するのです。

 果たすべき使命や目標を前に、努力を重ねる人は無敵です。就活をしていたときよりも、社会人になってから一層意味をもち、私を鼓舞してくれる一冊になりました。

(2013.05.15)

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