講談社100周年記念企画 この1冊!:アフタヌーンKC『寄生獣』(1)〜(10)

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

194冊目

アフタヌーンKC『寄生獣』(1)〜(10)

岩明均

佐藤敏浩
デジタル第一営業部 30代 男

三度購入した作品

書籍表紙

アフタヌーンKC『寄生獣』
(1)〜(10)
著者:岩明均
発行年月日:1990/07/23〜1995/03/23

 空から飛来した、人間の脳に寄生して他人を捕食する正体不明の生物・パラサイト。
 主人公・泉新一もパラサイトに寄生された一人ですが、ひょんなことから脳ではなく右腕に寄生したパラサイト・ミギーとの共生生活が始まります。

 パラサイトはその高い知能により、あっという間に人間社会に溶け込み、人知れず捕食を行う術を学んでいくのですが、この捕食シーンを始めとしたスプラッター表現や緊張感のあるシーン描写のため、一見するとバイオレンスホラー作品といった印象を受けます。

 しかし、「自身が生きるために他生物を捕食することの何がいけないことか?」と、生物としての基本視点で自身の常識を語るミギーと、人間のものさしでパラサイトを量ろうとする新一の、立場の異なる者同士による論戦などが要所要所で描かれており、「生命とは、種とは何か?」といった壮大なテーマについて考えさせられる作品になっています。

 初めて読んだのは高校生の時、友人から借りてのまわし読みでした。友人が読み終わって貸してくれるのを待ちきれなくてまとめて購入したのを憶えています。

 その後、完全版を購入。上京後に再読したくなり電子書籍で購入と、人生において三度も購入した唯一の作品になりました。

 寄生獣をきっかけに知った『雪の峠・剣の舞』も同じく名作で、タイトルにあるそれぞれが独立した話になっています。思えば、戦国の世のひとつの流れを描いたこの作品で歴史に対する感覚が変わり、以降歴史物にも手を出すようになった気がします。

 本のみならずですが、ひとつの優れた作品を介してまた別の名作と出会い、そこから自分の世界を広げていくというのは、人間の優れた側面が培ってきた文化によるひとつの恩恵だと思います。

 これからも、より優れた作品を世に届ける役目であることを肝に銘じて頑張りたいと思います。

(2013.03.15)

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