講談社100周年記念企画 この1冊!:『MMR マガジンミステリー調査班』(1)〜(13)

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

191冊目

少年マガジンKC『MMR マガジンミステリー調査班』(1)〜(13)

石垣ゆうき

田中賢司
デジタルマーケティング部 40代 男

「な、なんだってーーー!!」から連想される本

書籍表紙

少年マガジンKC
『MMR マガジンミステリー調査班』(1)〜(13)
著者:石垣ゆうき
発行年月日:1991/07/17〜1999/10/15

 この物語は事実をもとにしたフィクションです。内容に関する問い合わせは電話では一切受け付けておりません。

 こんな注意書きが単行本目次に載っている本は他にあるだろうか? 20世紀末に忽然と「週刊少年マガジン」に読みきりシリーズ連載された『MMR マガジンミステリー調査班』(以下『MMR』)。実在の編集部員が数々の超常現象の謎に挑んでいくという企画が編集会議で持ち上がったとき、私は入社して半年目でした。指導社員からマンガ編集のノウハウを学びはじめたばかりの半人前にもなっていない私は、この企画に「ビビッ!」と運命的なものを感じたのです。

 高校・大学とノストラダムスの大予言やテレビで頻繁に放送されたUFO特番に熱中した一人だったからでした。そしてなんといっても、自分がマンガに登場できる、プロの漫画家の先生に自分を描いてもらえる、というかなりミーハーな気持ちから担当者(隊員)を募った時、自然と手を挙げていました。

 連載が始まってみると、1999年がせまっていることもあり、大反響! 予言・宇宙人・超能力・古代文明などの不思議現象を、物理学・化学・医学・心理学・地理・歴史などの分野から解明するというストーリーがおおいにうけたのです。そして隊長が衝撃的な結論を口にした時の他の隊員たちのセリフ「な、なんだってーーー!!」は『MMR』の代名詞となりました。

 続々届く読者からの電話やハガキに我々隊員たちは大喜び。しかし中には「今、UFOがウチの近くに来ています! すぐに調査しにきてください」といった深夜の沖縄からの依頼や「金縛りにあってます…。どうしたらいいでしょうか?」という、「どうしたら電話できるの?」とこちらが聞きたいような電話も少なくなかったなあ。

 順調に世界の謎を解明し続けているかのようにみえたMMRでしたが、ただひとつだけ暗黙の了解のように手をつけていない分野があったのです。それは“心霊現象”。そうです、MMR隊員たちはこぞって怖がりだったのです!

 しかし、読者から送られてきた一枚の写真が“その時”をもたらしました。座ったオジサンの後ろにうすボンヤリとオバアサンが写っているセピア色の写真。ホンモノとしか思えない…。それは一番年下の私が保管することになりましたが、自分が持っていると意識するだけでゾッとする。捨てるのもバチがあたりそうで、こっそりと先輩社員の引き出しに入れてしまいました。当然怒られたので、もう霊能力者に預けようというのがキッカケとなり、心霊現象の謎をテーマにすることになったのです。

 各々怖じ気づきながらも、3人いればなんとやら、で霊能力者を取材しました。ストーリーのネタになる情報を入手できて雑談に興じていると、その方が「未来をみてあげましょう」というので、お言葉に甘え「カノジョはいつできるでしょうか?」「何歳くらいまで生きられるでしょうか?」と矢継ぎ早やに質問する無邪気なところもあるMMR隊員たちであった。しかしその後、漫画家の石垣ゆうき先生が「深夜、原稿を描いていると、地震でもないのに本棚の上に置いたビンがコトコト、コトコトと揺れるんです」とおっしゃり、またまたビビるMMR隊員たちであった。

 その後、発足当時のメンバーは事情があり解散し(マンガでは引き続き登場していました)、新たに結成された後輩隊員たちが後を引き継ぎました。彼らは与那国島の海底遺跡やイースター島のモアイを取材したりして、『MMR』を盛り上げていきました。私も取材に行きたかった…と忸怩たる思いをしたのは言うまでもありません。

 ともあれ、『MMR』は私がはじめて自分から担当に立候補し、しかも読者に熱狂的に受け入れられた、今でも愛着のある作品です。これから単行本を全巻揃えるのは困難ですが、電子書籍なら読むことができます。あの世紀末の尋常でなかった雰囲気を『MMR』を読んで、もう一度思い出してみませんか?

(2013.02.01)

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