講談社100周年記念企画 この1冊!:新・講談社の絵本『桃太郎』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

184冊目

新・講談社の絵本『桃太郎』

画家:齋藤五百枝

酒井理恵
経理部 40代 女

子どもが良くなる絵本です

書籍表紙

新・講談社の絵本『桃太郎』
画家: 齋藤五百枝
発行年月日:2001/05/20

 子どもたちへの読み聞かせようにと購入した絵本「桃太郎」。とにかく絵が美しいこの絵本は、本当に子どもたちに読ませたい、後世に残したい絵本のひとつです。

 買って帰ったその日から、子どもたちは目をキラキラ輝かせながらページをめくり、子どもならではの目線で絵本を見ていました。

「おばあさん、歯が黒いね。虫歯かな」(お歯黒です)
「かっこいい服だね〜、僕も欲しいな」(鎧です)
「きびだんごってなーに? おいしい?」(食べたことないな〜)
「これって宝物なの? これ何?」(珊瑚や隠れ蓑、宝珠など、昔ならではですね)
そして最後に「桃太郎ってやっぱ、強えぇな〜」と一言。

 今の絵本は、鬼もずいぶんやさしく、かわいくなっています。そのためか、他の絵本を読んでも「桃太郎が強い」という感想を聞くことはありませんでした。しかしながらこの絵本の鬼は、大きな牙と角を持ち、眼光鋭いギョロリとした目で睨みつけてくる、恐ろしい顔をした強そうな鬼。その鬼を桃太郎はいとも簡単に倒す。だから子どもたちは「桃太郎は強い」「かっこいい」となるんだと思います。解説には子供たちの素朴な疑問の答えも載っており、漢字が少し混じった(ふりがな付き)この絵本は、読み聞かせはもとより、文字を読めるようになったばかりの子どもの本読み練習にもぴったりです。

 さて、この文章を書くにあたり、社の地下書庫に眠る、戦前、戦後の講談社の絵本シリーズ「桃太郎」を見てきました。たぶんもう、博物館などの蔵書でしか見ることができない絵本。もちろん話の大まかな内容は同じです。が、特に戦前版に、現代版にはない部分がたくさん含まれていましたので、少し紹介したいと思います。

 物語はまず、仲の良いおじいさんとおばあさんが楽しく暮らしていた、というところからはじまります。そして、川を流れてきた桃を引き寄せようとおばあさんは歌を歌います。

 アッチノミヅハ カアライゾ コッチノミヅハ アアマイゾ
 カアライミヅハ ヨケテコイ アアマイミヅヘ ヨッテコイ

 なるほど、だから桃を拾うことができたのですね。そして、びっくりなのが、桃を切ろうとしたとき。桃の中から「オヂイチャン マッテチャウダイ」と桃太郎の声がするのです! 「まってください」ではなく、「まってちょうだい」(笑)。赤ちゃんだからでしょうか……。その後、成長した桃太郎は鬼退治に行くのですが、きびだんごは「イクサ」に持っていく「ヒャウロウ(兵糧)」として作られます。大切な兵糧を家来(イヌ、サル、キジ)に分け与えた桃太郎は、慈愛深い大将であると解説にありました。そして桃太郎が鬼退治へ出かけた後、おじいさんとおばあさんは、無事を祈ってお宮へお参りに行きます。神を敬う信心深い精神が現れた、その時代らしい場面だと思います。キジが仲間になる場面も、サルのときと同様、ひと悶着あったことも書かれていました。そして無事帰ってきた後も、みんなでお宮へ詣で、メデタシ、メデタシで物語が終わります。その後のページには「桃太郎の歌」の歌詞が2曲。1曲は「ももたろさん、ももたろさん〜♪」のおなじみの曲ですが、もう一つは「桃から生まれた桃太郎〜」で始まる曲で、知らない歌でした(みなさんはご存知でしょうか)。

 内容以外もおもしろかったです。表紙の上部には「子供が良くなる 講談社の絵本」の文字。表紙に宣伝文を入れるなんて今では考えられません(帯には入れますが)。解説後の宣伝ページもすごいです。「この絵本を見るお子様はきっとメキメキ良くなります。賢くなります。家中が明るくなります。」さらに「勉強ずきになります。将来キット出世します。偉くもなれます。」あきらかに言い過ぎ、過大広告です(笑)。

 「桃太郎」から話がそれてしまいましたが、現代版も「良い子に育つ絵本」には違いありません。ぜひ入学のお祝いなどに、お子さまへ、お孫さんへ贈っていただきたい絵本です。

(2012.11.15)

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