講談社100周年記念企画 この1冊!:モーニングKC『う』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

177冊目

モーニングKC『う』

ラズウェル細木

高野博臣
書籍第二販売部 30代 男

鰻の旬は冬

書籍表紙

モーニングKC『う』
[1]〜[3](以下続刊)
著者: ラズウェル細木
発行年月日:2011/06/23〜2012/09/21(現在刊行中)

 会社の先輩に「尾花(おばな)に行こうよ」と誘われたのはもう10年以上も前のこと。『尾花』と聞いても何の店か分からずに、ついて行った先は南千住。線路沿いに歩くと小塚原の回向院へ。いったいどこへ向かうのだろうかと思ったらお墓の中からなんともい〜い匂いが…。ええっ!?鰻の名店「尾花」のその門は回向院の先に突如として現れます。「こんなに香ばしい煙をお墓に漂わせていいのか?」と思いながらも、「かえって供養になるのかも」と思い直して暖簾をくぐったのを昨日のことのように覚えています。

 味やお店だけでなく、同席した人を含め鰻を食べた経験そのものがいつまでも記憶に残るのは私だけでしょうか?

 本の話でしたね。すみません。鰻が好きなんです。

 そんな「鰻」を食べる主人公・藤岡椒太郎を描いたのがこの「う」という鰻画、もとい漫画です。他人様にこの漫画を紹介すると皆さん一様に「嘘でしょう〜?」とか「鰻だけで話がもつ訳無い!」なんておっしゃいますが嘘ではありません。椒太郎はただひたすらに鰻を食べ、味わっていきます。それだけで面白い!鰻にまつわるエピソードはもちろんのこと、大阪や福岡といった地方の鰻事情も魅力的。また、この漫画のすごいところは名店だけでなく、スーパーやコンビニ、はたまた牛丼屋の鰻まで描いているところ。鰻に対するこの公平な感覚は新鮮でした。「動物性の脂と醤油が混じり合って焼ける匂いは人間の食欲中枢を直接的に刺激する」という椒太郎の独白にも激しく同意します。 漫画に出てくるお店を自分で探し出すのも楽しみであります。

 ところでここまで読んでくださった皆様、おすすめの鰻屋さんはございますか?ございましたらぜひご教示ください。私がおすすめするのは池之端の「柏家」さん。メニューが少ないのがなんとも潔くて良いのです。お持ち帰りだったら巣鴨の「にしむら」さんが。家で温めなおしても味が落ちない!すごい!なんでだろう?あ…、本の話でしたね。最後まで鰻の話ですみません。「う」的に書くと「す鰻、す鰻」といったところでしょうか…。

 …駄文ご容赦ください。
 鰻のほんとうの旬は冬だそうです。これからいい季節。「う」を一読してから食べる、冬の鰻もまた格別かと。

(201210.01)

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