169冊目
現代新書『「タオ=道」の思想』
現代新書
『「タオ=道」の思想』
著者:林田愼之助
発行年月日:2002/10/20
「上善は水の若(ごと)し。水は善く万物を利するも争わず、衆人の悪(にく)む所に居る。故に道に幾(ちか)し……」
(水はものにとらわれることなくあるがままに流れて、万物を潤し、養っている。それでいてみずからを押し出すことをせず万物と争わない。そして人がもっとも厭がる低湿の地帯を流れて、そこにとどまっている。だから、その水の様態を精神に置き直せば、“無為自然の道”に近いのだ)
この文章に、惚れました……。心の奥をギュッと掴まれました(もちろん、津波や洪水となるとまた別ですが)。そして、他にもこんな“ココロに触れる言葉”が続々と登場します。読んでいると、なんだかふわ〜っとラクになる。まだの方は、是非読んでみてください。読み終えると、気持ちが川の透き通った水になったような、風にしなる青竹になったような、そんな清々しい状態に! アヴェダの香り。タムダオの匂い。
ところで、この本を即買いしたのは約10年前。今回改めて読み返してみて、パッと目に飛び込んできた箇所がありました。それは、ココ。
「夫(そ)れ慈を以(も)って戦えば、則ち勝ち、以って守れば、則ち固し。天は将(まさ)に之(人)を救い、是(慈)を以って、之を衛(まも)らんとす」
(人が慈しみの心をもって戦えば、その戦いに勝つことができる。人が慈しみの心をもって守ろうとすれば、その守りを堅固にすることができる。なぜならば、タオの力を宿した天は、慈しみの心をもつ人を救い、慈しみの心をもって人を守ろうとするからだ)
これを読んだ時、今各地で行われている『原発再稼働反対!!』のデモや様々な運動が頭に浮かびました。被災地・福島の問題が何ひとつ解決されていないまま、“取りようのない責任”を取ると言って、福井の大飯原発を再稼働させる政府。
本書の序章(8〜10ページ)にこう書かれています。
「原子力は、現代人の生活のさまざまな分野において、欠くことのできないエネルギーとして供給されているが、それがいったん武器として装填されたとき、人間の生命とその環境を徹底的に破壊し尽くす、恐るべき存在と化する。──略──タオは、この宇宙という大自然を秩序あらしめているもの、その大自然の秩序を支え、持続している原理ともいうべきものであって、その原理に根ざした老子ほど、人間の住む地球を含めて、大自然の秩序を大事にした思想家はいないということである。もし今日、老子がなお生きていたならば、いつもこの地球上のどこかでくり返し戦争を起こし、どこまで行きつくか知れない自然環境の破壊に手を貸している人智の愚かしさに、彼はいきどおっているにちがいない」
今こそ、老子を、そして私たちひとりひとりを嘆かせないために、自分にできるコトをしよう、金曜日の夜、永田町のデモにも行こう! 「脱原発!」と大声で言ってみよう! 署名もしよう、“タオイズムの叡智”をポケットに入れて。そんな気持ちになったのでした。
(2012.09.01)