講談社100周年記念企画 この1冊!:YA!ENTERTAINMANT『レガッタ! 水をつかむ』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

168冊目

YA! ENTERTAINMANT『レガッタ! 水をつかむ』

濱野京子

村上潔
社長室 54歳 男

ボートを漕ぐ魅力

書籍表紙

YA! ENTERTAINMANT
『レガッタ! 水をつかむ』
著者:濱野京子
発行年月日:2012/06/28

 いい年齢のオヤジがYA! ENTERTAINMENTを読むなんてキモい! なんて言わないでください。

 私は大学時代、ボート部に所属していました。埼玉県戸田市にあるボート部の合宿所で寝起きをして、日夜ボートの練習に明け暮れていました。「ボートを漕いでオリンピックに行こう」などと勧誘されその気になったものの、結果的には語るほどの戦績もあげられないまま卒業。思い起こすと、絶対的練習量が足りなかったのは確実で、もっと練習しておけばよかったと痛感しています。

 それでも、同じ釜の飯を食った艇友はもちろん、ボートを通じて他大学の友人もたくさん出来ました。大学を卒業して30年以上たった現在でも交友のあるボート仲間が百人以上いると思います。恵まれた社会人ライフを過ごすことが出来ているのも、学生時代に体力や気力を養ったおかげと言っても過言ではありません。少しでも「ボートに恩返しを!」という気持ちで、8年前から日本ボート協会の理事をやらせてもらっています。

 折りしもロンドン五輪が始まっています。ボートは過去の五輪でメダルを獲得したことがありません。そもそも欧米の強国選手に比べると、日本選手の体格・体力はいかんともしがたい差があり、世界の壁はきわめて厚いものがあります。それでも、体重制限のある軽量級種目を中心に日本のトップ選手はチャレンジを続けています。

 前置きがずいぶん長くなりました。サッカーや体操などに比べて超マイナー競技のボートは、普及や広報の活動が非常に難しい種目です。ボート協会にとっても「将来オリンピックでメダルを獲ってくれるような有望若手選手をいかに発掘してどう育てるか」が最大のテーマになっています。

 そんなときに、この『レガッタ! 水をつかむ』が刊行になりました。いいじゃないですか! まさに五輪開幕直前のナイスタイミングです。女子高生の主人公・飯塚有里がボートに出会い、一緒に漕ぐクルーの仲間と友情を育みつつ、オリンピック選手を目指して頑張っていくストーリー。ボート競技を経験した人はもちろん、ボートを漕いだ経験のない人にも「ボートを漕ぐことの魅力」が十分に伝わる作品だと思います。

 ボートは奥が深いスポーツです。オールが水をつかんで艇が進むことを感じる瞬間はゾクゾクします。よかったら一度でいいからボートを漕いでみてください。

(2012.08.01)

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