講談社100周年記念企画 この1冊!:「なかよし 1992年4月号」

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

166冊目

「なかよし 1992年4月号」

浜村菜月
写真部 20代 女

“なかよし”の素

書籍表紙

「なかよし 1992年4月号」
発行年月日:1992/03/03

 幼い頃、とても人見知りな子どもだった。自分ではなかなか他人に声をかけられず、いつも誰かから声をかけてもらうのを待っていたように思う。

 小学校低学年の時に転校をして、新しい環境の中、周囲にどうやってとけ込んだらいいのか分からなかった私は、休み時間はただただ絵を描き続けていた。その時に描いていた絵は、当時欠かさずに愛読していた『なかよし』に掲載されていた『セーラームーン』や『きんぎょ注意報!』などのキャラクター。ノートに向かう私に、「何かいてるの?」とクラスメイトが話しかけてくれたことをきっかけに、次第に友人ができていったような気がする。

 私が『なかよし』を買い始めたのは1992年。『美少女戦士セーラームーン』が始まった年で、『きんぎょ注意報!』や『ミラクル☆ガールズ』などが連載されていた。漫画はもちろんのこと、当時の私は小学校から帰ってきては『きんぎょ注意報!』のファミコンゲームをしたり、セーラームーンのカードを集めたり、早朝に起きだして『ミラクル☆ガールズ』のアニメを見たりと、とにかく『なかよし』に夢中だった。

 中でも私にとって、特別な作品がある。それは『なかよし』の妹雑誌『るんるん』の別冊付録だった『キャンディ・キャンディ』だ。最初はそのレトロな絵柄に違和感を抱きつつも、あっという間にその世界観に引き込まれていった。ちょっと珍しい(?)ステア派だった私は、彼の最期のシーンを読んでは何度も何度も大泣きしてしまったのが、本を読んで泣いた初めての経験だった。世代を超えて楽しめる作品と出会い、昔の漫画を読み始めるきっかけにもなった。

 中学生以降、さすがにお絵描きは卒業したが、クラス替えのある新学年のはじめには、よくお気に入りの漫画をまわし読みしたものだ。私が貸してまわっていたのは『あしたのジョー』と『キャンディ・キャンディ』。それはもう布教活動のように、みんなに勧め(むしろ無理矢理読ませ)、どのキャラが好きだとか、誰がカッコイイだとか、お互いの感想を共有することで相手との距離が縮まっていったように思う。こうして思い返してみると、私の友人作りは随分と漫画に助けられていたようだ。

 ちなみに、幼い頃の癖はなかなかぬけないもので、大人になった今でもペンを握るとついその辺の紙にセーラームーンやぎょぴちゃんの絵を描いてしまう。その絵はというと、さすがにちょっと恥ずかしいから、もう誰にも見せませんけれど。

(2012.08.01)

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