講談社100周年記念企画 この1冊!:『なでしこ力 次へ』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

162冊目

『なでしこ力 次へ』

佐々木則夫

矢野透
ディズニーファン編集部 50代 男

なでしこ+ノリさん力

書籍表紙

『なでしこ力 次へ』
著者:佐々木則夫
発行年月日:2012/04/24

 7月27日に開会式が行われるロンドンオリンピック。サッカーだけは早くスタートし、女子は7月25日にカナダ戦、28日にスエーデン戦、31日に南アフリカ戦と続きます。

 その「なでしこジャパン」を率いるのが、佐々木則夫監督。通称、ノリさんです(当人は率いるとか指導とかの言葉すら嫌う、”選手と一緒に”感覚の人ですが)。

 そのノリさんが自分で書いた本が『なでしこ力』と『なでしこ力 次へ』。他社にはありません。

 昨年1月末に出した前作『なでしこ力』は、夏にワールドカップで優勝するなでしこジャパンの姿を予言するような本でした。

 実は社内では、女子のワールドカップがドイツで行われること、いやそれ以上に女子ワールドカップがあることすら知らない人が圧倒的でした。

 そのような雰囲気の中で「女子日本代表は、ワールドカップで優勝する!だから本を出したい」と断言した私。 サッカー協会の偉い人に内容を話しても「そんなこと言っちゃって大丈夫?」と懐疑的な反応でした。

出してしばらくはほとんど売れなかったのですが、ワールドカップが始まってから大好調。今春発売の『なでしこ力 次へ』刊行につながったのです。

『なでしこ力 次へ』では、ワールドカップ優勝の分析と秘話、ロンドンオリンピック対策、さらにはその後を睨んだ将来の夢を語ってもらっています。

 世間では、親父ギャグのおもしろい監督、というイメージがありますが、サッカーに関しては、ノリさんは滅茶苦茶まじめで深く思考するタイプです。

 あるテレビのニュースショーに出て、司会者に最後「親父ギャグをひとつ」と頼まれ、やってはみたものの、放送後「おれはお笑いタレントじゃないのに」と苦笑していたのもノリさんです。

 もうひとつ。愛犬のブラッシングをしながら深く長時間サッカーのことを考えすぎて、ほとんど毛が抜けてしまっていたというのも、ノリさんです。愛犬には、いい迷惑ですね。

 元日本代表の木村和司さんは明大サッカー部の同期。「則夫は、後輩にやさしかった。女子の指導者として成功した一因には、人に対して優しい性格とか、人を肩書きで見ない人間性もあるのでは」と木村さんは語っています。同じような意見は、スタッフや元スタッフからも、もらっています。彼のすぐれた一面でしょう。

 一方男子女子問わずサッカーの試合後に、ノリさんと私が話をすることがたまにあります。クルマの中などで、雑談したことも、かなりあります。そのときの話は、非常に本質を見抜いたものが多く、20年以上サッカー記事やサッカー本を多数出している私としては、大変参考になります。ちなみにディズニーファン編集部でありながらサッカー本を出しているのは、私の経歴とサッカーに対する愛情ゆえと思っています。

 同時に、今まで日本女子の弱点とされていた部分を、「むしろ強みだ」と自信をもたせてくれたのも、ノリさんの功績です。

 悪平等、横並び、自分で打開しない、弱気、という日本人及び日本女子に対する悪評価を、ノリさんは「それだけではない、弱みを感じるすぐれた感性、思いやり、やさしさ、共通理解、協調性などは、世界でもあまりない日本女性の良いところだ」と分析しています。

 サッカーのことが分からない人も、ぜひ読んでみてください。きっと、勇気が出てくると思います。

 最後に、ノリさんが好きなディズニーキャラクターは、グーフィーであることを明かしておきます。

(2012.07.15)

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