講談社100周年記念企画 この1冊!:ヤングマガジン特別編集 6月26日増刊号「頭文字D プロジェクトD栃木エリア編」

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

137冊目

ヤングマガジン特別編集 6月26日増刊号「頭文字D プロジェクトD栃木エリア編」

林育男

濱崎峰夫
デジタルマーケティング部 49歳 男

売ることの面白さを教えてくれた1冊

書籍表紙

ヤングマガジン特別編集
6月26日増刊号
「頭文字D プロジェクトD栃木エリア編」
発行年月日:2003/06/26

 当時コミック販売部でヤングマガジンの担当だった僕は、ヤンマガの編集者と飲んでいた。そして、「今度セガから頭文字Dのゲームが出るんだけど、一緒にプロモーションをすることになって…」と相談を持ちかけられた。

  誌面やイベントのタイアップなんかのアイデアから始まっていくうちに、「ヤンマガ本誌に、ゲームの体験版を貼りこみで付録につけられないかなぁ?」ってアイデアが。しかしながら、当時のヤングマガジンは発行130万部超を誇る大雑誌。130万の雑誌に付録をつけることはコスト的にも難しい。しかも、ゲームの売上枚数よりも多い体験版の配布は、ゲームメーカーから見ればあまりに非現実的。

「だったら頭文字Dの総集編を作ってそれに体験版をつければいいじゃん!」

 当時ゲーム雑誌にゲームの体験版が付録でつくことは稀にあったが、コミックの総集編にゲームの体験版の付録がつくことは業界でも前例が無かった。

「とにかく、セガにこの企画をプレゼンしよう!」という話になり、翌日からプレゼン資料を作成し、編集、広告、販売共同で先方にプレゼンしたところ、好感触を得ることができた。セガのほうで体験版の制作費を予算化してもらう為、宣伝プランと予算を組みなおしてもらい、結果10万枚の予算が確保できた。

 ところで総集編を作るといっても、『頭文字D』は数年前に群馬編が出てからしばらく時間があいていた。出すとすれば栃木編ということになるが、単行本で4冊分、従来の総集編の編成だと2〜3冊分ものボリュームがある。それでも、ゲームの発売の盛り上がりと体験版の付録効果を考えれば、ここは一冊にまとめてしまい一気に勝負をつけるしかない。というわけで、総ページは1076Pの超極厚サイズに!(極厚総集編も当時はまだあまり実例が無かった)価格も990円に抑え値頃感を出した(セガさんの体験版提供あればこその価格設定でした)。

 コンビニや複合店を中心に展開を考え、ゲームと総集編のプロモーションを各バイヤーと詰めていったが小売側の反応もよく、色々なプロモーションが実現できた。
(このとき某大手コンビニのバイヤーからは、10万部すべてを自分のチェーンに配本しろと迫られ、3時間近く引き止められて帰れなかったのも今となってはいい思い出です)

 発売後は期待通り売れ行きも好調で、見事完売に! ゲームのほうも好調で前作を上回るセールスをあげることができ、セガの担当者の方にも喜んで頂けました。

 この経験のおかげで『売る』ことと『売れる』ことの違いを実感できたように思います。そして、その後DVD付き総集編(これも当時、業界初でしたが思ったようには売れなかった…泣)を出したり、コミック雑誌にコンビニ限定の挟み込み特典をつけたり(今となってはよく見かけますが、当時コミック雑誌では初めての試みでした)、社内の2つの編集部の漫画を1冊にして出してみたり(これは経理処理が難しくて経理部から文句をいわれた) などなど、いろんなことにトライしました。

 どうすれば売れるのか? どう売るのか? と常に自問しながら販売という仕事をしていると、いろんなアイデアが湧いてきて、そしてそれを実現していく作業はとてもクリエイティブで楽しい時間です。

(2012.04.01)

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