114冊目
『猫の印象派』
『猫の印象派』
著者:スーザン・ハーバート
発行年月日:1992/11/25
かなり重度の猫バカである。家では、毎晩玄関先で三つ指ついて帰りを迎えてくれるキジトラシスターズ(左上写真)を猫可愛がりしている。うっかり猫の話をし始めようものなら止まらない。一応、人の迷惑は顧みて、相手が同好の士の場合に限るようにはしている。
一方、趣味のひとつに絵画鑑賞がある。学生の頃から好きだったが、週刊の美術パートワークを手がけて以来、筋金が入った。好きな絵を挙げたらこれまた止まらない。が、見るほう専門で、絵心はまるでない。
そんな私にとって、一冊でダブルに楽しい、珠玉の愛蔵本がこれ。画集『猫の印象派』だ。
ルノワールの「ピアノに寄る少女たち」、マネの「笛を吹く少年」、ゴーギャンの「タヒチの女」、モネの「ひなげし」...誰もが、見れば「ああ、これね」と思うであろう印象派の名画の数々。これらに描かれた登場人物が、もしもみんな猫だったら――? ロートレックもゴッホもゴヤもカサットも、出てくるのがぜんぶ猫だったら!? こんな途方もない暴挙(?)に及んだ、大胆不敵なパロディ名画集である。タッチや色づかいが相当オリジナルに迫っているだけに、そこに猫がピタリと見事にはまっているのが、「可愛い〜」とか「上手い〜」をとっくに通り越して、何やら不思議ですらある。原画そっくりの衣装をまとって、いきいきとポーズをキメるニャンコたち。原作者である巨匠たちも苦笑しそうなナリキリぶりに、思わず「恐れ入りました」と言いそうになってしまう。
作者のハーバート女史は、この印象派のみならず中世、ルネサンス、バロック、ロココ、19世紀の名画から、オペラやシェイクスピアなどの名作文学にいたるまで様々な題材を、執拗なまでに猫を主役に描きまくっているお方。まさに偉大なる超・猫バカアーティストなのである。もしかしたら、アトリエの足元には、モフモフの毛に宝石の目をした小さなモデルたちがじゃれ回っていたかもしれない。時折、絵筆を置いて抱き上げては、この子に一番合う役は何だろう?と、インスピレーションを巡らせたりしたのだろうか。
猫バカは、おそらく不治の病であろう。美術好きなのも、一生変わることがないと思われる。気づけば20年近く私の本棚にあるこの画集も、この先ずっと同じようにあり続け、時々取り出して眺めては、そのたびに思わずニヤリとしてしまうんだろうニャア。
(2012.01.01)