講談社100周年記念企画 この1冊!:『試みの地平線<伝説復活編>』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

104冊目

講談社文庫『試みの地平線<伝説復活編>』

北方謙三

土屋賢司
デザート編集部 49歳 男

読むと活力が湧く人生相談

書籍表紙

講談社文庫
『試みの地平線<伝説復活編>』
著者:北方謙三
発行年月日:2006/01/15

「私をスキーに連れてって」やトレンディードラマが流行り、日本中がバブル景気に浮かれていた80年代後半、情報誌ホットドッグ・プレスを僕は愛読していました。ファッション、女の子、SEX…軽ーい記事が並ぶ中で、異色だった男くさい人生相談のコーナーがこの「試みの地平線」。

「相手を傷つけずに別れる方法は?」「虫がよすぎる。」

「HDPをみてファッションやヘアスタイルなどを研究していますが、モテません。何が欠けているのでしょうか?」「頭の中身が欠けている。」

「性器が小さいことで悩んでいます。」「ソープへ行け。」

 ハードボイルド作家北方謙三さんの過激な回答にいつもぶっ飛んでいました。

 端から見たら笑ってしまうような悩みから、「つきあっている女性が乱暴されてしまった」、「両親の突然の離婚にどうしていいかわからない」、「自殺してしまった彼を忘れられない」というような答えを出すのがむずかしいものまで、どの悩みにも自分ならどうするだろうかと、北方さんが真剣に考えて回答を出しているのを感じます。

「渋谷を歩いていたら、男が女の軽そうなショルダーバッグを持っている。勘違いするな、小僧ども。男の本当の優しさは女のバッグを持ってやることではない。」

 男にも女にも手厳しく「試みの地平線をHDPから追放しよう」というハガキが集まったりしたこともある賛否両論のコーナーだったけれど、肌ざわりの悪い言葉に隠された優しさを回答に感じるこの人生相談が好きでした。

「男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない。」という台詞を思い出すような、まさしくハードボイルドな人生相談です。

(2011.11.15)

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