95冊目
児童文学創作シリーズ『ちいさいモモちゃん』
児童文学創作シリーズ
『ちいさいモモちゃん』
著者:松谷みよ子
発行年月日:1964/07/15
真っ赤な靴をはいた女の子。表紙のモモちゃんはお人形で、かわいらしいというより、思慮深い感じ。たぶん、小学1年生のとき。「モモちゃん」のものがたりが大好きで、何度も何度も読みました。モモちゃんが生まれた日から、「ほいくえん」で過ごす3歳までを描いた、このシリーズ第1作は、「児童文学」の名作で今さら紹介するまでもないとおもうのだけれど、「この1冊!」といえばやはりこれです。
「いいもの、あげますよう。」って、はらっぱを進んでいって、泣いてるクマのあかちゃんにミルクをあげるモモちゃん。やさしくて勇敢で包容力のある、真っ黒なねこのプー。
モモちゃんは、もうせんは、プーのおよめちゃんになるの、っていってました。でもとってもとっても大きくなって、三つになったので、ネコのおよめちゃんは、やめにしました。
モモちゃんはコウちゃんを選んじゃうけど、プーは理想のボーイフレンドだとおもう。
そして、賢くてかわいらしいモモちゃんの姿より、「ママ」のありように心ひかれていたんだと気づいたのは、もう大人になってからでした。こんなにきっぱりと、美しく、優しくて甘くて、愛があふれて、強くてしっかり立っている女の人って、モモちゃんのママがはじめてでした。シリーズではその後、妹が生まれ、パパが「お客さん」になって後にいなくなるまでが、モモちゃんの愛らしい成長とともに描かれています。ママは、モモちゃんをたいせつにたいせつに育てながら、ママ自身をたいせつに生きてゆく。「お母さん」って、子どもを育てることがすべてじゃないのは当たり前なんだけど、子どものころは、そんなこと知らなかったし。大人になって、モモちゃんのママの物語が、祈るような思いが染み入るようで、読むとそのたび泣きそうになります。
女の子は誰でも、お砂糖とスパイスとでできているから、この上等なスパイスを、女の子に味わってほしいとおもいます。そしてやっぱり、プーがいちばん!とおもうのです。
(2011.10.15)