76冊目
私に萌える女たち
『私に萌える女たち』
著者:米澤泉
発行年月日:2010/09/29
入社してすぐ女性誌に配属され、約15年間ファッション誌編集の仕事に携わりました。
そんな私にとって、ファッション・化粧文化論専門家である著者が、女性誌の40年の歴史をひもとき、そこからわかる女性たちの在り方の変化を語ったこの本は、非常にリアルで面白く、あっという間に読んでしまいました。
編集者時代に学んだことは、「女性は誰かのためではなく、自分がなりたいと思う自分になるために、オシャレする」ということ。「男性に好かれる髪型特集」より、「私がいちばん美しく見える髪型特集」のほうが、圧倒的に読者に支持されるのです。
仕事も家庭も手に入れて、しかもいつまでも美しい私でいたい―自分の欲望に忠実に、どん欲に生きていこうとする女性たちのことを著者は「私萌えの女」と表現していますが、私の経験からも、十分納得できる今時の女性像です。
「なんか、ジコチューでわがままな、やな女たちだなあ」と思いがちですが、著者は彼女たちを批判していません。むしろ「私に萌える女たち」が新しい世の中をつくるのだと言っています。
確かに、女性の欲望を満たすため、様々な商品が生まれて、経済が活気づきます。働く妻のために、育児や家事に協力的なイクメンも増えることでしょう。育児に関する制度も充実していくかもしれません。(総務っぽくてスミマセン)
女性が自分に萌え、いきいき元気いっぱいに生きている社会って、とても素晴らしい、もっとわがままに人生を謳歌しちゃっていいんだ、そう思わせてくれます。
著者自らファッション誌中毒者と名乗るだけあって、アカデミックかつミーハーチックで、大学の先生が書いたとは思えない読みやすさ。かつて女性誌上で一世を風靡したモデル、女優たちの名前がバンバン出てきて、自分の華やかなりし(?)青春時代なぞをつい思い出してにんまりしてしまいます。
女性だけでなく、女性の気持ちがいまいちわからん、彼女に振り回されてかなわん、という男性にも、ぜひ読んでみて欲しい一冊です。
(2011.07.15)