66冊目
講談社文庫『あなたにここにいて欲しい』
講談社文庫
『あなたにここにいて欲しい』
著者:新井素子
発行年月日:1987/08/15
この企画を知ってからずっと自分の1冊を考えていました。
やはり書くなら自分にとっての人生のターニングポイント本が良いなと思っていました。
人生においてのターニングポイント本って、何冊かあると思います。例えば、本と出合うきっかけになった本とか、初めて買ってもらった本とか、初めて自分で買った本とか、人生を変えた本とか…
そう考えていくと、私が講談社に入るきっかけになった本、作家さんを紹介したいと思いました。
ただ1冊が特定できなかったので、新井素子さんの代表作の1冊、『あなたにここにいて欲しい』をあげさせてもらいました。
(この企画が「この1冊」という趣旨なのに申し訳ございません……)
中学生の頃、新井素子さんの本が大好きで、新刊が出る度、書店に買いにいきました。自分が読むだけではあきたらず、読み終わると友達に貸して、感想を求めていました。
新井素子さんの一人称の語り口が大好きで、一時期私が書く文章は新井素子調になっていました。またあとがきもおもしろく、同じ時間を共有しているように感じていました。
ある時、あとがきで、自分の両親が出版社に勤めているので常に自分の周りには本があり、作家になったのは必然だった、というような文章に合い、その時に、ああ、出版社に入れば、本に囲まれた生活ができるんだ!と認識をしました。
その時から出版社への入り方というのを時折考えるようになりました。
タイミング良く講談社に入社することができたのですが、その後にもエピソードがあります。
新入社員の研修の時、書籍業務部という部署に2週間、仮配属になりました。書籍の予算を管理する部署で、本だけでなく、絵や額縁、仏像も商品として扱っていてびっくりした記憶があります。
その部署で指導していただいていた高田さんに、どうして出版社に入ったのか聞かれたので、新井素子さんの話をしました。そうしたらなんと高田さんが、
「そうなの。じゃあ新井さんに挨拶にいきましょう。」
と言われたのです。
私は全く気づいてはいなかったのですが、新井素子さんのご両親は講談社で働いていらして、お父様はご定年なさり、お母様が校閲にいらっしゃるとのことでした。何も知らないのに私は同じ講談社に入社していたのです。
『あなたにここにいて欲しい』のあとがきにはご両親が講談社で働いている、ちなみにお祖父さんも講談社で働いていたということが書かれています。この本ももちろん読みましたが、講談社というところはなぜか覚えていませんでした。
その後、昼休みに高田さんと校閲局を訪ね、新井素子さんのお母様にご挨拶にいきました。お母様は非常に喜んでくださり、新井素子さんの本を持ってくればサインをいただけるというお話をいただきました。お言葉に甘えて、何冊か新井素子さんの本をお持ちして、サインをいただきました。
入社1年目から宝物ができました。
これからまだまだ人生のターニングポイント本に出合うこともあると思います。その時を楽しみに本を読んでいきたいと思っています。
(2011.06.15)