64冊目
『ルポ十四歳 消える少女たち』
『ルポ十四歳 消える少女たち』
著者:井田真木子
発行年月日:2002/02/15
「井田真木子さんがあわただしく駆け抜けるように世を去ったのは、2001年3月14日だった。まだ44歳の若さだった。」
本書『ルポ十四歳 消える少女たち』で柳田邦男さんが解説に寄せられた冒頭の一文です。
私岡田は現在24歳、初めて「ノンフィクション」というものに触れた高校生の時、周りの友人で立花隆さんや吉村昭さんといった名前を知っている友人はほとんどいませんでした。いたとしても「ああ、『耳をすませば』の雫のお父さんの声の人か。声優さんじゃないの?」ぐらいでした。
大学に入学し、周りの友人が次々とバックパックを背負って海外に一人旅に向かう理由を訊いてみても、沢木耕太郎さんの『深夜特急』の名前が挙がることはありませんでした。
「猿岩石に憧れたっていうのが原体験としてあるのかな」。そう呟く友人に、あの『電波少年』の企画は『深夜特急』へのオマージュなんだよと言っても、ただきょとんとされるばかりでした。
私はノンフィクションというジャンルが隆盛を極めた時代を実際には知りません。あるノンフィクションに感銘を受けたものの、その作者の他の本は既に絶版になっていたり、手に入りにくくなっていたり、作者が亡くなられていたりということが非常に多くありました。なんとかして手に入れながら、感銘を受けた作家さんの作品をひたすら昔へ昔へと遡っていく、それが私の読書体験の多くの部分だったように思います。
大学時代に出会った井田真木子さんの作品もそのように順々に辿っていきました。取材対象である援助交際を繰り返す少女たちや同性愛者の方々、その人たちのほとんどは「オーディナリーピープル」と看做されていることが多くありますが、といったともすれば埋もれてしまうような人々に寄り添い、極限まで同化する彼女の姿勢と強烈な生き様、それと相反するような配慮と慈しみに満ちた文章にただただ胸を打たれました。
亡くなられた作家の方の作品を辿っていくというのはただ興味深く、面白いといったことだけではないもの哀しさが常に付きまとう感覚があります。44歳という若さで夭折された井田さんの足跡を追うことは、とりわけ感に堪えないものがありました。
私は初めに遺作である本書『ルポ十四歳 消える少女たち』を読み、作家・井田真木子の強烈な残像を目の当たりにし、最後に処女作である『プロレス少女伝説』に辿り着き、デビュー当時の鮮烈な、全力で生きているからこそ猛烈な速度で死にむかっていくような井田さんに出会いました。
もし本書を読まれた方ならば他の作品も、他の作品を読まれた方ならば本書『ルポ十四歳 消える少女たち』もお手に取っていただければと思います。
(2011.06.01)