62冊目
火の鳥伝記文庫『ノストラダムス 予言者で奇跡の医者』
火の鳥伝記文庫
『ノストラダムス 予言者で奇跡の医者』
著者:飛鳥昭雄
発行年月日:1994/12/05
1999年第7番目の月
驚愕の大王 天から地に落とされし
アンゴルモアの大王を甦らさんと
その前後にマルスは平和を盾に支配に乗り出す
(『諸世紀』第10巻72番)
皆さん、このフレーズを一度は聞いたことがあるでしょう。そう、あの有名な「ノストラダムスの大予言」です。
──火の鳥伝記文庫『ノストラダムス』飛鳥昭雄著。
私がこの本に出会ったのは、1997年。当時、巷を騒がせていたノストラダムスの予言とは、1999年の8月(ノストラダムスの時代に使われていた太陰暦では7月)に人類が滅亡するというもの。2年後にやってくる「何か」に人々は好奇の目を向け、怯え、あるいは鼻で笑い、様々な感情が入り乱れて熱を持ち、妙な興奮が世の中を包んでいました。その頃の私はというと、本気で予言を信じる小学五年生。どうせあと2年しか生きられないんだからと中学受験の勉強にも身が入らず、1999年の8月には、「ああこれが最後の朝かもしれない……ああこれが最後のご飯かもしれない……」と、毎日青ざめながら過ごしていました。そんなある日、偶然出会ったこの伝記。おっかなびっくり、私はページを開いてみたのです。
「不気味な予言者」としてのイメージが強い彼ですが、若い頃は名医としてペストに立ち向かい、多くの人々の命を救った正義の人でした。しかし、皮肉にもその伝染病で妻子を亡くしてしまった彼は、悲しみを背負い放浪の旅に出、やがて予言者としての力を得るのです。その後、フランス王アンリ2世の死やヒトラーの出現を予言し、後の教皇になる少年修道士にお告げを授けるなどの数々の奇跡を起こした彼は、ついに自分の死までを予言して、静かにその生涯を閉じました。悪魔のように恐ろしい人物だと思っていたノストラダムスの真実の姿が、実は心優しきお医者様で、家族を失えば涙を流す、血の通った一人の人間だったということは、私にとって大変な驚きでした。
しかし、本編以上に興味深かったのは、著者の飛鳥昭雄氏による巻末解説です。1999年に起きる「何か」は、私にとってはただ漠然とした、実体のない恐怖でしかありませんでした。しかし、恐らく保護者向けに書かれているのであろう解説文には、予言に関する飛鳥氏自身の考察や、天文学的、歴史的観点から検証された、様々な学術的見解が紹介されていました。その中に、その「何か」とは、核戦争を意味しているのだという解釈があったのです。多少時期のズレはありますが、2001年、強大な国が核を巡り、歴史的な戦争を始めました。人類が滅びることはありませんでしたが、ノストラダムスの予言は、このことを指していたのではないだろうか……私の脳裏に、ふとそんな思いが過りました。
理屈では到底説明できない人知を超えた力が、この世界には働いている。私はこの本に出会い、確かにそう感じるようになりました。UFOに超常現象、世界の七不思議に、未確認生物……信じるか信じないかは人それぞれですが、信じた方が、人生はもっと楽しくなるように思います。それはまるで、フィクションの世界が現実にあふれ出てきているような感覚です。人類滅亡を乗り越え、『ノストラダムス』に導かれて、私は今、心豊かな輝く世界に立っています。
(2011.06.01)