講談社100周年記念企画 この1冊!:講談社文庫「奥右筆秘帳」シリーズ

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

59冊目

講談社文庫「奥右筆秘帳」シリーズ

上田秀人

奈良正純
雑誌宣伝部 60歳 男

爽快な読後感をもたらす筆力全開の快作!

書籍表紙

講談社文庫
「奥右筆秘帳」シリーズ
著者:上田秀人
発行年月日:2007/09/14〜2010/12/15(第7弾現在)

「密封」にはじまり、「隠密」まで、現在7巻刊行されている人気シリーズです。宝島社の「この文庫書き下ろし時代小説がすごい!」ベストシリーズ第一位に選ばれたほどの、抜群の読み応えが実に爽快な読後感を味あわせてくれるのです。

 小生、活字中毒、音羽の二宮金次郎などと呼ばれるくらいの本好きですが、自社刊行のもので、あえて書店で購入するのは(時代小説に限れば)池波正太郎、佐伯泰英の両巨頭とこの上田秀人氏だけなのです。

 それはなぜか。小生、購入するかどうかの基準は、二度以上読み返す魅力があるかどうかにあります。一度、これはという作品にめぐり合えたなら、その作家の作品はだまって買い求めます(もっとも2冊連続で期待を裏切られたときは見捨てますが)。

 「奥右筆秘帳」に限らず、上田氏の作品は、歴史の裏面と権力闘争、それにかかわる暗闘、そしてまきこまれる主人公の成長物語がみごとにからみあい、物語を大きく膨らませていきます。光文社文庫の「勘定吟味役異聞」でその魅力を80パーセントだした(小生の独断ですが)氏の筆力が全開されたのが、この「奥右筆秘帳」なのです。主人公の柊衛悟の剣の境地が高く、高く成っていくさま、奥右筆組頭の立花併右衛門の苦悩と決断。時代物にありがちなご都合主義な展開をきわめて自然にもっていく構想力。

 何度読み返したことでしょうか。家にあふれかえる本の山から、探し出すのが困難なときは、社の図書館から借りて読んでもいます。

(2011.05.13)

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