講談社100周年記念企画 この1冊!:復刻版のらくろ漫画全集1『のらくろ上等兵』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

55冊目

復刻版のらくろ漫画全集 1 『のらくろ上等兵』

田河水泡

高島恒雄
児童図書第二出版部 50歳 男

発見したのは小学校3年生のときであります

書籍表紙

復刻版のらくろ漫画全集 1
『のらくろ上等兵』
著者:田河水泡
発行年月日:1969/09/25

 小さいころから本は好きだったようです。母が見返しにメッセージを添えて童話の本をプレゼントしてくれたのは、2歳の誕生日でした。(さすがにその日のことを覚えているわけではなく、たまたま本が残っているからわかるんですけど)

 私が通っていた小学校は、どうしたはずみか1年生から2年生に進級するときにクラス替えがあったきり、その後5年間卒業するまで同じクラスだったんですよね。5クラスもあったのに。

 早生まれだったせいか、長男だったせいか、ぼんやりしてるうちに1年生が終わってしまい、2年にあがったらまたもや新しいクラスメートがいっぱい。なんだかうまくなじめずに、一人で本を読んでいました。

 さすがに3年生にもなれば、クラスメートの名前も覚え、ちょっとは会話もしてたんだとは思います。そんな昭和44年の秋。書店で1冊の古くさくて新しい本を見つけました。それも道理、昭和7年刊行の本を、奥付や巻末の本の広告に至るまで、まるごと復刻した本だったのです。タイトルは『のらくろ上等兵』。

 のらくろも、上等兵もよく分かりません。でもなんとなく気になり、堅牢な箱からそっと抜き出してみると、のらくろの顔をアップにつかった印象的なデザインの表紙。中をぱらぱら見ると単純なコマ割にシンプルな物語。そのころ読んでいた少年マガジンとはまったく違う漫画が展開されていたのです。

 セリフは旧かな、のんびりしたテンポの展開。軍隊を舞台としていても戦争のニオイがほとんどせず(まだ昭和7年ですからね)、おじいさんから昔の落語を聞いているような感じで、セリフの語尾が「……であります」なんていうのも古くて逆に新鮮でおもしろい。

 一人で楽しむだけじゃもったいなくて、学校で何人かに見せてみました。案外おもしろがってくれる人もいて、話したことない人にも読んでもらったりしているうちに、だんだん積極的になり、しまいには無理矢理貸し付けたりする始末。

 勢いがつくのは恐ろしいもので、その後、復刻が続くのらくろを買い続け、貸し続け、調子に乗って他の本も持って行き、貸し出しノートも作り、さながら一人学級図書館。私の机の周りは貸す本返す本借りる人で芋の子を洗うよう、ってのは大げさですが、それなりのにぎわいが生まれ、そうしてだんだんクラスになじんでいったのでした。

 人の知らない作品を見つけ、多くの人に紹介するというのは、才能を集め、新しい何かに編み、たくさんの人に届けるという、編集の仕事とまったく同じだと思います。子どものころから、そういうことが好きだったんですね。好きなことを仕事にできてヨカッタ。これからも、すばらしい作家、作品を世界中の子どもたちに伝えたいと思っています。

 そうそう。その後、一人図書館業務は、「アレはうるさいから止めてほしい」とホームルームで指摘され、始めて数ヵ月後にぱたりと終わったのでした。

(2011.04.28)

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