54冊目
mimiKC『タケコさんの恋人』
mimiKC『タケコさんの恋人』
著者:望月玲子
発行年月日:1991/03/13〜1996/04/12
はじめて手にとって読んだのは学生のとき。田舎から東京にでてきた1年目だったと思う。しかも、友だち所有の。時代はすでに歴史になっている80年代バブル。トレンディドラマにどっぷり浸っていた田舎娘が東京生活というものに妙な憧れをいだいても、仕方ないでしょ? そんな中で出会った“タケコさん”は私の憧れになった。大手商社でスーパー秘書を務め、夜になればディスコ(!)で踊り狂い、パワフルな生活を送っている。でも、いつも超然としている恋人のしーちゃんにはめっぽう弱く……。設定だけをみれば、間違いなくバブルなのだが、タケコさんみたくなりたいな〜と思った。そのときはなぜこんなに自分がタケコさんに魅かれたのか、分析をしたことはない。ただただ、タケコさんに魅かれた。
その後、バブルがはじけ切って、講談社に入社した頃、書店で久しぶりにあった「タケコさんの恋人」を大人買い。時代は変わっても、やっぱりタケコさんの魅力はあせなかった。かっこいい。
働き始めて15年がたつ今だからわかるのだが、がんばっているとき、努力のときタケコさんは人に自分の努力をアピールをしない。失敗のとき、挫折のとき、タケコさんは言い訳をしない。それは恋愛でも。うまくいかないのを人のせい、社会のせい、運のせいにしない。自分で背負う。もちろん、そんな中でパンクし、落ち込むのも人間ならでは。
いろんな人がいていいと思う。甘えたり、弱音を吐くことで救われることもある。そんなに人は強くない。でも、理想としてはやっぱりタケコさんのようにありたいと私は思う。働くということ、社会に身をおくこと、人を思いやること……学生時代にはよくわからなかった、目に見えないことをタケコさんの生き方を通して、イメージトレーニングしていたのではないかと思う。
タケコさんはくじけそうになると、自分のおでこをパンパンッと叩き、気合を入れる。闘魂注入。そうはしないが、気がつけば、心が折れそうなとき“選曲・自分”のがんばれソングを口ずさむ。それが、私の闘魂注入の儀式に今はなっている。タケコさん、出会えて本当によかった。
(2011.04.28)