44冊目
『風に吹かれて豆腐屋ジョニー 実録 男前豆腐店ストーリー』
『風に吹かれて豆腐屋ジョニー 実録 男前豆腐店ストーリー』
著者:伊藤信吾
発行年月日:2006/07/12
小学校のクラスメイトの家がお豆腐屋さんでした。髪の長い女の子。この娘と結婚したらお豆腐屋さんになるのかなあ…、などという妄想癖のあった小学生の私でした。小学校高学年になる頃には近所にスーパーができて、子どもながらにお豆腐屋さんの経営を心配したものです。大学に通っている頃にはたしかまだあの場所にあったはず。
会社で働くようになって、何年後かに実家に帰ると、そのお豆腐屋さんはなくなっていました。実家に帰るたびに、馴染みの商店街は姿を変えていくのでした。彼女の行方はわかりません。
小学生の私にとって、豆腐を買いにいくことはひとつのイベントでした。「豆腐を買う」という目的(親に与えられた使命)があって、お豆腐屋さんに行く。すると、おじさんが水の中から豆腐を掬い出してくれる。パックに入れてくれ、手渡されると、ビニール袋が冷たい。買い物先がスーパーに代わり、食材を買いにいったついでに豆腐を買うことはあるけれど、“豆腐を買う”という目的はなくなりました。
私が豆腐を買う楽しさをすっかりと忘れていた頃に、「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」は登場しました。メディアにもずいぶんととりあげられて、大きな話題になりました。時代が変わって、豆腐を買いに行くという目的がなくなった分、豆腐を買う楽しさをプラスしてくれたようなお豆腐でした。 ブログや各種メディアの言うままに、ハチミツかけてデザート代わりに食べました。コンビニでも売っていた、小さめの「ジョニ男」が好きだったなあ。最近は同じ会社の「一本気豆腐」にだし醤油をかけて食べています。身がギュッと詰まっている感じで、美味しい…。
本の話でした。
この豆腐をつくっているのは男前豆腐店。男前豆腐店のジョニー社長は豆腐屋の息子でした。豆腐屋といっても、街の“お豆腐屋さん”ではなく、豆腐工場ですけれど。そのジョニー社長がどういう風に独自の世界を持つ豆腐屋になっていくか。どうしてこういう豆腐をつくり出すことになっていくのか。そういうことが本の中で語られます。といっても、偉そうなビジネス書ではなく、自分の言葉で語られる“物語”になっています。豆腐とは、大豆とにがりと“想い”からできるものだと知りました。
考えてみれば、出版社も本をつくる「製造業」。いろんな人の力を借りて、かたちある本を日々つくっています。想いのつまった本が世に出て、たくさんの方に読んでもらえると嬉しいものです。本の仕事をしながら、時々豆腐のことを思い出しています。
P.S.
奈良小学校でクラスメイトだった彼女、なにしていますか?
これを読んだら、連絡ください。
(2011.03.15)