37冊目
死・終わりなき生
『死・終わりなき生』
著者:オショー・ラジニーシ
発行年月日:1989/08/10
OSHOラジニーシ『死・終わりなき生』が講談社から出版されると知ったのは、1989年5月、彼に会うためにインドのアシュラム(道場)に滞在しているときでした。
「死から自由になる必要もなければ、死に打ち勝つ必要もない。死を知ることが必要だ。まさに知ることが、自由となり、知ることそれ自体が勝利となる」「死を知ることによって、死は消えていく。そのとき不意に、はじめて、われわれは生と結ばれる」
不思議な縁で手元に来た手垢にまみれた彼の英語の本の冒頭の一行を読んだとき、どんな本を読んでも体験しなかった強烈な感覚に打たれました。彼は自分が知りたいことを知っている。それは怖くなるような未知の感覚で、その感覚に導かれ、恐る恐る彼に会いに行くしかなかったのです。
OSHOという人の周りには静寂の空間が広がっていました。自分の中で途切れることのなかった思考の動きが完全に止まり、静寂に包まれ、悩み苦しみもがいている自分という感覚が消えたのでした。自分という感覚が消えると、過去も未来も消えて、いまここという瞬間が圧倒的な存在感をもってその神秘的な姿を現し、ゴッホの絵の世界のように輝きだしたのです。
彼の元で過ごした2週間の間、内側には静けさと至福が満ち、一瞬一瞬が奇跡のように展開していきました。ただ合掌するばかりでした。そしてOSHOの本がKodanshaから出版される予定だと聞いたのでした。
日本に帰国すると、次第に内側にまたいつもの悩み苦しみもがいている自分という感覚が思考とともに戻ってきました。『死・終わりなき生』はその年の8月に出版されました。
「ほんとうの問題は死の恐怖なのだ。そして、瞑想とは死のプロセスだ。完全な瞑想状態のなかで、われわれは死者と同じ地点にたどり着く」「死から逃げつづけているかぎり、あなたは死に打ち負かされつづけるだろう。しかし、あなたが立ち上がって死と出会った日には、まさにその日には、死はあなたから去ってゆき、あなたは残る」
OSHOは翌90年1月19日に亡くなりました。
いまも悩み苦しみもがく自分という感覚がしっかりと内側にあるのですが、同時にハートのスペースには彼が指し示してくれた静けさと至福の空間が感じられます。彼の本を読むというのは、行間から伝わってくるその静けさと空を感じる体験です。
「一滴の雫が広大な海に消えるとき、生の絶対的な意味が、生のこのうえない至福が、生の至上の美が、達成される」
(2011.03.01)