01講談社100周年記念企画 この1冊!:なかよしKC『キャンディ・キャンディ』

講談社100周年記念企画「この1冊!」

 

1冊目

なかよしKC『キャンディ・キャンディ』

原作:水木杏子 漫画:いがらしゆみこ

及川美穂子
管財部 40代 女

1冊の漫画から本好きに

書籍表紙

なかよしKC
『キャンディ・キャンディ』
原作:水木杏子
漫画:いがらしゆみこ
発行年月日:1975/10/05

 創業以来の1冊。何を選んだらよいのだろう……。悩んでいる様子を見ていた小学5年生の娘がひと言。「ママはやっぱり、『キャンディ・キャンディ』でしょ!」そうか、そうだよね。好きな本や漫画はたくさんあるけれど、この1冊と言えばそれしかない。

『キャンディ・キャンディ』に夢中になっていたのは8歳を過ぎた頃。(ああ、年がばれてしまう)『キャンディ・キャンディ』を連載していた『なかよし』の発売日が楽しみで、学校から帰宅するとお小遣いを握りしめて近所の本屋さんへ走って行った。わくわくドキドキしながら部屋の片隅でページをめくっていたことを思い出す。そのひとときはキラキラと輝いていた。

『キャンディ・キャンディ』は、親がいないアメリカ人の女の子が主人公。どんなに苦しくても辛くても、明るさと笑顔を忘れない。すごく美人なわけでもないけれど、お転婆でチャーミング。ドレスを着た(女の子の憧れ!)上流階級の生活やイギリスの寄宿学校などの設定も、少女の好奇心を満たしてくれる作品だった。

 次々と登場する男の子たちもとても魅力的。私は金髪のアンソニーが大好きで、アンソニーの登場シーンは何度も何度も読み返した。初恋?に近いものがあったかも……。アンソニーが落馬して死んでしまった時、本当にショックだったのを覚えている。今にして思えば、物語の中とはいえ、自分が好きな人物の「死」を実感したのは初めてだったのだと思う。その後のキャンディの苦しみや悲しみに共感しながら、どうにもならない喪失感というものを知った。当時はわからなかったが、人として少し成長したのかもしれない。

『キャンディ・キャンディ』を卒業する頃には、漫画、小説を問わず読書好きになっていた。その流れで出版社に勤務することにもなった。本好きのきっかけは、やはりこの漫画との出会いがあったからだと思う。

 今や2児の母となり、子どもの頃から集めた漫画や小説を娘たちに貸し出すようになった。『キャンディ・キャンディ』を貸した時の娘たちの感想は「この漫画、すごい!」。時は流れても素晴らしいものは素晴らしい。面白いものは面白い。本好きの血は受け継がれていく……。ちなみに娘たちもアンソニー派。そんなところまで受け継がれてしまった。

(2010.11.1)

講談社の本はこちら

講談社BOOK倶楽部 野間清治と創業物語